高可用性を提供するには、3 つの SQL Anywhere サーバ (1 つの「監視」サーバと 2 つの「パートナ」サーバ) が必要です。1 つのパートナサーバには「プライマリ」ロールが割り当てられ、もう 1 つには「ミラー」ロールが割り当てられます。グローバルテーブルへの挿入などの書き込み操作はプライマリサーバでのみ許可されますが、選択などの読み込み操作はどちらのタイプのサーバでも許可されます。プライマリサーバは、更新を受信するたびにミラーサーバを同期します。プライマリサーバで障害が発生した場合は、監視サーバによって、ミラーサーバがプライマリサーバとなるようにパートナのロールが切り替えられます。

Relay Server 経由ですべての HTTP 要求をルート指定することにより、Web サービス環境内で高可用性を活用できます。Relay Server では、HTTP 要求の URL を処理して、ターゲットサーバファームが抽出されます。わかりやすくするため、HTTP 要求を readFarm または writeFarm のどちらかにルート指定する Relay Server 設定について考えてみます。プライマリバックエンドサーバでは読み込み要求と書き込み要求の両方を処理できますが、サーバ障害が発生したときに読み込み機能を処理する他の読み込み専用コピーノードがある場合には書き込み要求のみを処理するよう設定し、そうでない場合には読み込み要求と書き込み要求の両方を処理するように設定できます。ただし、ミラーサーバで読み込み要求を処理して読み込み負荷を分散したり、ミラーサーバでのハードウェア使用を削減するために要求をいっさい処理しないように設定したりできます。クライアントアプリケーションでは、読み込み要求と書き込み要求用にアクセスする物理サーバを認識する必要はなく、要求を readFarm または writeFarm のどちらかにダイレクトするように URL を構成するにすぎません。

Relay Server に加え、パートナである各バックエンドサーバには、2 つの Outbound Enabler が必要です (バックエンドサーバが参加している各ファームに 1 つずつ)。2 つの Outbound Enabler は、プライマリパートナへの通信チャネルを制御し、ミラーパートナとの通信を確立します。この設定では、プライマリサーバは常に 1 つしか存在しません。プライマリサーバは、writeFarm に割り当てられた Outbound Enabler をアクティブにし、コピーノード以外のメンバーが readFarm に存在する場合は、オプションとして readFarm に関連付けられている Outbound Enabler を非アクティブにします。ミラーサーバは、writeFarm に関連付けられている Outbound Enabler を非アクティブにし、オプションとして readFarm に関連付けられている Outbound Enabler をアクティブにします。

ハードウェアやソフトウェアの障害によりプライマリサーバが使用できなくなった場合、ミラーサーバが監視サーバとネゴシエートしてデータベースのロールを引き受け、これにより writeFarm のメンバーとなります。また、他の読み込み専用コピーノードがシステムに存在しない場合は、readFarm のメンバーにもなります。障害が発生すると、元のプライマリサーバが writeFarm と readFarm のメンバーである場合は、その両方への参加が突然解消されます。元のプライマリサーバは、障害の原因が究明するまで回復しないことがあります。回復した場合にはミラーロールが想定され、オプションとして readFarm に加わります。サーバの突然の障害により、そのサーバで処理されていた要求が失敗することがあります。ミラーサーバからの writeFarm の回復の遅延は、SQL Anywhere ミラーのロール切り替えの遅延と、ミラーの writeFarm Outbound Enabler で指定されたステータスポーリング間隔によって異なります。このステータスポーリング間隔は、明示的に指定されていない場合は設定できます。デフォルトは 5 秒です。

スケールアウト機能を提供するには、最低でも 2 つの SQL Anywhere サーバ (ルートノードとコピーノード) が必要です。コピーノードは、ミラーサーバと同様に読み込み専用ですが、プライマリロールが想定されることがないという点でミラーサーバとは異なります。コピーノードは、読み込み要求のサービスに限定されています。高可用性の項で説明したように、プライマリサーバは writeFarm に関連付けられ、コピーノードは readFarm メンバーとしてミラーサーバに置き換わります。1 つのルートノードと 1 つのコピーノードの場合は、合計 2 つの Outbound Enabler のみが必要です (各サーバに 1 つずつ)。すべてのコピーノードが停止しても環境が完全に機能できるようにするため、オプションとしてプライマリサーバを readFarm に追加できます。ルートノードに関連付けられている Outbound Enabler は、writeFarm への要求を受信するように設定されます。一方、コピーノードの Outbound Enabler は、readFarm への要求を受け入れるように設定されます。ルートノードは、書き込み更新を受信した時点でコピーノードを継続的に更新します。コピーノードを readFarm に追加することで、設定を拡張できます。readFarm に対して 10 個のコピーノードを実行すると、負荷分散が行われ、readFarm 内で発生するサーバ障害が緩和されます。

上記の設定シナリオを組み合わせて、高可用性とスケールアウトの両方を提供することができます。このような設定では、書き込み可能 (プライマリ／ミラー) と読み込み可能 (ミラーとコピー) のバックエンドサーバに対してフォールトトレランスが提供されます。また、コピーノードをさらに追加することで、HTTP 読み込み専用要求に対する潜在的なスループットが高まります。この設定では、プライマリサーバとミラーサーバがルートノードを構成し、プライマリノード、ミラーノード、コピーノードのすべてに Outbound Enabler がそれぞれ 1 つずつ関連付けられて readFarm に加わります。プライマリサーバとミラーサーバには、writeFarm に加わるための追加の Outbound Enabler があります。オプションとして、プライマリサーバとミラーサーバを readFarm から削除できます。

この説明では、次の項目を識別するために Outbound Enabler を設定してください。

次のコマンドで、-cr オプションで指定されたパラメータに基づいて Relay Server への接続を設定する Outbound Enabler を示します。Relay Server がアクティブの場合は、readFarm に対して行われた要求を、-cs オプションに基づいて設定されたバックエンドサーバに転送します。

rsoe.exe -f readFarm -id saHost1 -cr url_suffix="/rs/server/rs_server.dll";host=rs_server;port=80 -cs host=sahost1;port=8080;status_url=/satest/oe_read_status?ro=1

上記の例に基づいて、http://rs_server/rs/client/rs_client.dll/readFarm/service_path[?service_query] の形式の要求 URL は、

rs_server サーバでホストされている Relay Server に要求をダイレクトします。Relay Server は、URL からドメインとファームの各コンポーネントを削除し、ファームに関連付けられた Outbound Enabler に要求を RS-OE チャネル経由でリレーします。次に、Outbound Enabler は要求をバックエンドサーバに転送します。

バックエンドサーバで要求の処理準備が整ったことが Outbound Enabler で検出された場合にのみ、Relay Server へのチャネルが保持されます。検出するには、設定可能な間隔でサーバをポーリングし、-cs オプションで指定された HTTP 要求を送信します。status_url オプションは、ping サービス用の特定の URL パスを指定します。上記の設定例では、HTTP 要求が Outbound Enabler から http://sahost1:8080/satest/oe_read_status?ro=1 に送信されます。サーバから AVAILABLE=TRUE | ON | 1 と応答されると、Outbound Enabler は、rs_server でホストされる Relay Server との通信チャネルを保持または開始します。

SQL Anywhere を Web サーバとして設定および起動するには、HTTP Web サーバとしての SQL Anywhereを参照してください。

Outbound Enabler の設定の項で説明している RSOE (Relay Server Outbound Enabler) 起動例を活用して、oe_read_status サービスを次のように作成できます。

// READ-ONLY SA-OE ping service
//  optionally includes primary as a READ node.
call sa_make_object( 'service', 'oe_read_status' );
alter service oe_read_status
    type 'raw'
    authorization off
    secure off
    user DBA
    as call sp_oe_read_status(:ro);

// if ro is 1 then only read-only servers are activated: mirror or copy
// if ro is 0 then include all servers: primary, mirror, copy...
create or replace procedure sp_oe_read_status( ro int )
begin
    declare readonly long varchar;
    declare res long varchar;

    set res = 'AVAILABLE=';

    set ro = isnull(ro, 0);
    if ro = 1 then
         select db_property('ReadOnly') into readonly;
          if readonly = 'On' then
               set res = res || 'TRUE';
          else
               set res = res || 'FALSE';
           end if;
    end if;;

    call sa_set_http_header('Content-Length', length(res) );
    select res;
end;

上記の Web サービスとストアドプロシージャは、プライマリノード、ミラーノード、コピーノードのロールを持つ任意の SQL Anywhere サーバに使用できます。ReadOnly データベースプロパティを On に設定すると、AVAILABLE=TRUE が返されます。ミラーを変更して、ReadOnly データベースプロパティを Off に設定した場合にのみ、writeFarm などの書き込み可能なサーバファーム内で使用するサービスから AVAILABLE=TRUE が返されます。オプションとして、グローバルテーブルのエントリなどの他の要因に基づいて、Outbound Enabler に対する ping サービスの可用性を決めることもできます。たとえば、段階的な配備では、プライマリノードでテーブルやプロシージャを更新し、ミラーノードとコピーノードに伝達された時点で、各サーバのサーバファームメンバーシップをアクティブにしたり非アクティブにしたりします。

Relay Server を設定するには、次の手順に従います。

• Relay Server の概要
• Relay Server 設定ファイル
• Relay Server ファーム設定の更新
• バックエンドファームセクションのプロパティ